英文名 | Academic Skills Seminar | |
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科目概要 | 2025年度 前期/1単位 | |
授業対象 | 指定なし(M学部,N学部,ET学科,OT専攻,OV専攻,FR学部を除く) 火5/ [自由]M学部 火5/ [自由]N学部 火5/ [自由]ET学科 火5/ [自由]OV専攻 火5/ [自由]FR学部 火5 | |
科目責任者 | 田中 伸明 | |
担当者 | 田中 伸明 | |
備考 | 科目ナンバリング:L102-ME04/授業形態:演習 |
この授業では、アカデミック・ライティング(学術的文章作法)の基礎を、西洋の歴史・文化に関する題材への取り組みを通じ身につけることを目指します。今後の大学生活・社会生活の中で、みなさんはさまざまな種類の文章を書くことを求められます。自分の意見や考えは関係なく、事実の報告のみを淡々と求められる場合もあれば、自身の見解や意見を中心とした文章を求められる場合もあるでしょう。ところが、事実の報告「だけ」といっても、どこまでが客観的事実でどこからがそうでないか、を区別するというのは存外難しく、また、自分の判断や感想を説得力や客観性を伴って相手に伝える、ということも決して簡単ではありません。この授業ではまず、学術的に書かれた文献への豊富な事例検討を通じ、「事実」と言える事柄と著者(あるいは引用者)の「見解」と言える事柄の区別をする訓練を行っていきます。あわせて、ある定められたテーマに対して、事実の報告のみを行う文章、また他者の意見を参考にしながら自身の見解を述べる文章を作成する練習を行うことで、学術的文章作法の基礎確立を図ります。その集大成として2,000字前後の「エッセイ*」を書き提出することが、この授業の最終目標です。
授業中に読み、また書いてもらう題材は、基本的に西洋の歴史・文化を扱ったものから採ることとします。文章読解・作成技術の向上と同時に、西洋の重要な歴史的・文化的事象に関する知識を増やし、みなさんの「教養」を今後深めていくための材料を提供することも、この授業のもう一つの目的です。また、読む題材としては時折、英語の文献も混ぜていきます。大学以降の学習では、学術界における標準言語である英語を避けて通ることはできません。翻訳がない場合など、日本語で事足りない場合は、英語であっても臆すことなく読むモチヴェーションを持つ必要があります。授業を通じ、大学で学ぶ際の基礎姿勢も身につけてもらえればと思います。
* エッセイ Essayとは、学術的に書かれた意見文・小論のことで、アメリカやイギリスの高校・大学におけるレポートの一般的な形式として知られています。この形式は、現在自然科学系の諸分野で用いられる論文フォーマットの基礎となっているため、「エッセイ」の文章形式に慣れることは、今後みなさんが本格的に論文を執筆する際大きく役立つものとなるでしょう。なお、Essayの邦語「随想」が意味する文学形式とは大きく異なります。
①「事実」と「見解」を適切に区別して文章を読む能力を身につけさせるため、各回予習として文献の事前リーディングを指示する。教科的に英語に触れる次元を脱してもらうため、英語のリーディング課題も一定数課す。
②アカデミック・ライティングの基礎を、以下の3点を中心に身につけさせるため、各履修学生に対して少なくとも3回、要約や報告、小レポートの提出を指示する。
a. 効果的な要約と引用の方法 b. 客観性を担保しつつ自らの見解を表明する手法 c. 自らの見解に説得力を持たせる手法
③西洋の歴史・文化に関する題材に関する講義を、文章読解・作成技術の向上に関するそれと併せて行う。
【この授業は全て対面で実施します】初回を除き、毎回の授業は以下のような流れで進行します。
【予習】指定された文献を読む; 対象者は報告や要約、小レポートといった課題を事前に執筆し提出(各履修生は学期中少なくとも3回、課題提出の必要があります)
【授業中】提出された報告や要約、小レポートを紹介・添削; 指定の文献内容に沿った歴史・文化的な題材に関する講義; 次回授業の文献紹介と配布; 文献を読む際の注意事項や課題への取り組み方法の伝達
文章を書く技法の指導に際しては、米英の大学で広く使われているThey say I sayを参考書として使用します(購入の必要はありません)。
【フィードバックの方法】Google Classroomを通じ提出された小レポート課題(計3回)への授業内での添削。最終エッセイのための個人面談。
【授業時間外に必要な学習の時間:15時間】
予習:指定した文献の読解
復習:取り扱われた内容の確認・復習
その他:指定された文章の執筆と提出・最終エッセイの準備と提出
回 | 担当者 | 項目 | 内容 |
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1 | 田中 伸明 | オリエンテーション | 参加者との懇談・自己紹介; 授業内容の説明と課題担当箇所の決定 |
2 | 田中 伸明 | 古典古代––ギリシャ・ローマの歴史と文化① | 「事実」と著者の「見解」を見分ける; 書物・人物に関する「報告」を書く; 取り扱われた題材に関する見識の強化 |
3 | 田中 伸明 | 古典古代––ギリシャ・ローマの歴史と文化② | 「事実」と著者の「見解」を見分ける; 書物・人物に関する「報告」を書く; 取り扱われた題材に関する見識の強化 |
4 | 田中 伸明 | 停滞の時代?–– 中世とキリスト教① (They say I say; section 1 and 2: “they say” & “Her point is”) | 「事実」と著者の「見解」を見分ける; 記述における著者の見解を要約する; 取り扱われた題材に関する見識の強化 |
5 | 田中 伸明 | 停滞の時代?–– 中世とキリスト教② (They say I say; section 1 and 2: “they say” & “Her point is”) | 「事実」と著者の「見解」を見分ける; 記述における著者の見解を要約する; 取り扱われた題材に関する見識の強化 |
6 | 田中 伸明 | ルネサンスと宗教改革① (They say I say; section 3: “As he himself puts it”) | 「事実」と著者の「見解」を見分ける;著者の見解を引用を行いながら要約する; 取り扱われた題材に関する見識の強化 |
7 | 田中 伸明 | ルネサンスと宗教改革② (They say I say; section 3: “As he himself puts it”) | 「事実」と著者の「見解」を見分ける;著者の見解を引用を行いながら要約する; 取り扱われた題材に関する見識の強化 |
8 | 田中 伸明 | 前半学習内容のまとめ (They say I say; section 1, 2 and 3) | 文章に対する批判的読み方; これまで取り扱われた題材に関する見識の強化 |
9 | 田中 伸明 | 宗教改革後のキリスト教 (They say I say; section 4: “Yes/No/OK, But”) | ある見解・立場に対する自分の意見を表明する;取り扱われた題材に関する見識の強化 |
10 | 田中 伸明 | 18世紀①(絶対王政の盛衰) (They say I say; section 4: “Yes/No/OK, But”) | ある見解・立場に対する自分の意見を表明する;取り扱われた題材に関する見識の強化 |
11 | 田中 伸明 | 18世紀②(アメリカの誕生とフランス革命) (They say I say; section 5: “Distinguishing what you say from what they say”) | ある見解・立場に対する自分の意見を、他者の意見を援用したり批判したりしながら表明する; 取り扱われた題材に関する見識の強化 |
12 | 田中 伸明 | 産業革命前後––19世紀 (They say I say; section 5: “Distinguishing what you say from what they say”) | ある見解・立場に対する自分の意見を、他者の意見を援用したり批判したりしながら表明する; 取り扱われた題材に関する見識の強化 |
13 | 田中 伸明 | 歴史を踏まえて現在を見る① (They say I say; section 6 and 7: “Skeptics may object” & “So what? Who cares?”) | ある見解・立場に対する自分の意見を論理的かつ説得的に披露する; 取り扱われた題材に関する見識の強化 |
14 | 田中 伸明 | 歴史を踏まえて現在を見る② (They say I say; section 6 and 7: “Skeptics may object” & “So what? Who cares?”) | ある見解・立場に対する自分の意見を論理的かつ説得的に披露する;取り扱われた題材に関する見識の強化 |
15 | 田中 伸明 | 後半学習内容のまとめ (They say I say; section 1, 2 and 3) | 文章の効果的・説得的な形成の仕方; これまで取り扱われた題材に関する見識の強化 |
①「事実」と「見解」を適切に区別して文章を読む能力が身に付く。
②アカデミック・ライティングの基礎を身につけて、効果的・説得的な学術的文章を書けるようになる。
③現在の学術界において主流を占める米英風の議論構築法に、リーディングや課題実施を通じて慣れると同時に、その学習成果をエッセイ執筆を通じアウトプットできるようになる。
・担当箇所の報告、要約、小レポート等の提出(計3回:15%×3)
・期末エッセイ 55%(2,000字程度・内容については担当教員と個別に面談の上で決定する)
*全体の2/3以上に出席が認められない限り、単位認定を行わない。授業滞在時間が75分に満たなかった者は遅刻・早退の扱いとし、これを3回重ねた場合1回欠席したものとみなす。なお、担当を指定された以外の箇所で報告、要約、小レポート等の提出があった場合、ボーナス点を加点します。
実際に課題を書いて提出するのは計4回(学期中3回・期末エッセイ1回)ですが、授業にはリーディング課題を必ず読んだ上で臨んでください。授業は、みなさんが課題を読んだ前提で進めます。課題を読んでいないと追いつくのが難しく、理解も中途半端になってしまうでしょう。また、授業はあえて「西洋かぶれ」なやり方で実施します。授業中の講師側からの問いかけに対し、みなさんの積極的な発言を求めていく、ということです。欧米圏の大学では、発言をせず黙っているだけでは授業に参加しているとは見做されません。今後みなさんが欧米圏へ留学・研究滞在する機会の準備になってほしいという思いで、講師もドイツ滞在中に参加し大きく成長できた、「本場のゼミナール」をこの授業を通じて体験してほしいと思います。ただし、発言が苦手だから、大勢の前での質問は恥ずかしいと思ってしまうから、といった理由で履修を見送ることはしないでください。発言や質問は強制しませんし、講師側からアシストして発言してもらうなど、様々な工夫をおこなって皆さんの授業参加を促していきます。
なお、提出してもらった課題の紹介と添削を毎回の授業で行います。匿名ではありますが、提出された文章が履修学生全体に紹介されることになりますので、そのことを了解できる方に履修をお願いしたいと思います。なお、時間が限られることもあり、提出課題一つ一つに対して丁寧な添削をおこなっている時間は授業中にはありません。詳細なフィードバックを希望する人は、個別に時間をとりますので、Google Classroomから面談の予約をとってください(約15分程度)。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 | 定価(円) |
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教科書 | 教科書は使用しない。リーディング課題・参考書については授業中に適宜指示する。 | |||
参考書 | “They Say/I Say” The Moves that Matter in Academic Writing | Gerald Graff and Cathy Birkenstein | W. W. Norton & Company | 3,796 |