英文名 | Religious Studies B | |
---|---|---|
科目概要 | 2025年度 後期/2単位 | |
授業対象 | 指定なし 月1or月2 | |
科目責任者 | 榎本 香織 | |
担当者 | 榎本 香織※ | |
備考 | 科目ナンバリング:L101-HC12/授業形態:講義 |
日本人は無宗教だと言われたり、自身でもそのように考えている人が多いようです。けれどもよく目を凝らしてこの社会を見てみると、宗教が意外なところで重要な役割を果たしていたり、通常は宗教と無関係だと思われている事柄にも宗教的な背景や要素が潜んでいたりすることに気づくでしょう。とはいえ、そもそも「宗教」とは何でしょうか? この授業では「宗教」についての基礎へと立ち返り、この問題をとりまくさまざまな事情を解きほぐします。それにより、現代社会を「宗教」という観点から理解する視野を獲得します。
「信仰と救いA」が各宗教を縦断的に見てきたのに対し「信仰と救いB」は宗教の諸現象を横断的に見ていきます。すなわち、多くの宗教を構成する神話や伝説、聖と俗といった「宗教的世界観」、祈りや儀礼、修行や戒律といった「宗教的行為」、そしてメディア、ジェンダー、公共性、いのちといった現代社会のテーマと宗教がどのようにかかわっているのかを学ぶことで、宗教が、実は私たちの生活空間に様々な形で影響を与えていることを学びます。
【この授業は全て対面で実施します】
本講義ではパワーポイントを用い、レジュメを毎回配布します。講義の合間にみなさんにも小さな話題を投げかけ、考えてもらうこともあります。
【フィードバックの方法】
講義の最後に毎回リアクションペーパーを記入、提出してもらいます。次回講義の初めにそれらのフィードバックを行います。
予習:講義のテーマに沿った本や紹介した参考書を読み、予め概略を確認する(2時間)
復習:講義内容を整理、紹介した本や論文を読んだり、身近なところで学んだテーマを見つけてみる(2時間)
回 | 項目 | 内容 |
---|---|---|
1 | イントロダクション | 「宗教学を学ぶとはどういうことか」を説明します。宗教学とは何か、どのような分野があるのか、代表的な研究者の業績とともに見ていきます。 |
2 | 宗教と宗教学 | 「宗教」と「宗教学」はどう違うのか?対象へ向ける視点の違いなど、学問として宗教を扱う際に必要なポイントを見ていきます。 |
3 | 宗教的世界観1「神話・伝説」 | 神話とは何か、どのような機能があるか、そして神話が現代においてどのような意味や意義があるかを見ていきます。 |
4 | 宗教的世界観2「聖と俗、ハレとケ」 | 宗教を宗教たらしめる概念「聖と俗」、日本独自の宗教空間の区切りである「ハレとケ」について論じます。 |
5 | 宗教的世界観3「死生観、他界観」 | 「死後どうなるか、どこへ行くか」という死生観と他界観を多くの宗教が持っています。代表的な宗教の他界観を紹介し比較していきます。 |
6 | 宗教的行為1「祈り」 | 信仰の有無にかかわらず私たちは「祈る」ことをします。そもそも祈りとは何か?「祈り」の中身について考えていきます。 |
7 | 宗教的行為2「儀礼」 | 聖なるものと関わるための一連の行為を「儀礼」と呼びます。年中行事や通過儀礼もそのひとつです。その構造と機能から、儀礼が何のために存在するかを考えます。 |
8 | 宗教的行為3「修行、戒律」 | 心身を鍛える「修行」と様々な約束事を守る「戒律」は宗教の中でどのような役割をもっているのか。様々なかたちの修行や戒律の中身に触れていきます。 |
9 | 宗教的行為4「祭り」 | 祭りの中で人々は熱狂しますが、宗教にも多くの祭りがあります。どのような祭りがあり、それぞれどのような意味があるかを見ていきます。 |
10 | 宗教的行為5「呪術、科学と宗教」 | 目的の為に超自然的な力を利用する行為「呪術」は学問的にどのように探究されてきたかを辿り、そして現代の呪術の実情にも触れていきます。 |
11 | 現代社会と宗教1「宗教とメディア」 | 日本の公共放送の中で、実は宗教番組は最も古いジャンルの一つです。公共放送が宗教をどのような目的でどう扱ってきたか、その歴史を見ていきます。 |
12 | 現代社会と宗教3「宗教と公共性」 | 政教分離の観点から日本の宗教は公共性が薄いと考えられています。宗教と社会福祉活動について、東日本大震災の事例を中心に紹介していきます。 |
13 | 現代社会と宗教4「宗教とウェルビーイング」 | 近年、よりよく生きる(well being)ための宗教の可能性が再考されています。「信仰」「幸福」などの主観的幸せとは異なる形で宗教が持つ「よりよく生きる」ための社会的仕組みについて見ていきます。 |
14 | 現代社会と宗教5「宗教といのち」 | 宗教への関心が薄く(無く)ても、死をめぐる事柄に関心を持つ人は多いです。現在、宗教はいのちのありかたとどう向き合っているか、「臨床宗教師」「スピリチュアルケア」を一例に見ていきます。 |
15 | まとめ | 後期のまとめ |
宗教学の基本姿勢を身につけることで、宗教の本質と現象を学問的に理解・説明できる
宗教の本質や機能に関する基礎的な知識を体系的に得ることで、現代社会の問題を立体的に考察できる
試験方法:定期試験 実施時期:試験期間
毎回のリアクションペーパー提出(授業を通じて何を感じ、考えたかを纏める)により、授業内容がきちんと理解されているか、主体的に考察がなされているかを見ます。学期末にはそれまでの授業の総復習となるテストを定期試験期間中に行います。最終的にリアクションペーパーや授業時の参加態度などの通常時(履修登録期間を除く。50%)+期末定期試験(50%)で成績を付けます。
日々の生活に目を凝らせば、様々な場面で宗教的な現象や可能性が見つかります。それらについて適切な距離と視線をもって向き合うことができれば、現代社会に生きる上での他者やわたしたち自身について深く理解するためのヒントが得られるでしょう。
第13-15回授業では、公共空間における宗教側の実践について、現場で得た知見も共有していきたいと思います。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 | 定価(円) |
---|---|---|---|---|
教科書 | (なし) | |||
参考書 | 宗教学キーワード | 島園進、葛西健太、福島信吉、藤原聖子 | 有斐閣 | 2,090円 |
参考書 | 隠される宗教、顕れる宗教・国内編Ⅱ(いま宗教に向き合う2) | 池澤優、藤原聖子、堀江宗正、西村明 編 | 岩波書店 | 2,530円 |
参考書 | しあわせの宗教学 | 櫻井義秀 編 | 法蔵館 | 2,750円 |