英文名 | Ethics B | |
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科目概要 | 2025年度 後期/2単位 | |
授業対象 | 指定なし 月1or水2 | |
科目責任者 | 鵜澤 和彦 | |
担当者 | 鵜澤 和彦※ | |
備考 | 科目ナンバリング:L101-HC08/授業形態:講義 |
わたしたちは今日、新型出生前診断(NIPT)を通じて、胎児の遺伝的疾患を容易に、また、高い精度で発見することが可能になりました。生殖補助医療(ART)の技術革新は、妊婦の不妊治療の改善や身体的・精神的負担の軽減を目的としていますが、実際には、胎児のいのちを選別する手段とも化しています。また、このようないのちの選別は、胎児の人工妊娠中絶にとどまらず、動物のいのちの扱い方にも見られます。わたしたちは、胎児や動物のいのちを自分たちの都合で扱ってよいのでしょうか。それとも、いのちの選別は、道徳的に許されないことなのでしょうか。本授業は、先端医療技術の発展によって新たに生じたモラル・ジレンマを取り上げ、生命・医療倫理学の焦眉の問題を考えることを目的とします。
医療現場におけるモラル・ジレンマの分析を通じて、その背景にある価値観の対立を理解します。さらに、医療従事者として相応しい行動・態度がとれるよう医療・看護倫理の諸原則も学びます。なお、各回のテーマをより具体的に捉えるために、視聴覚教材(VTRや映画の一部)を活用します。【キーワード】生殖医療、精子バンク、着床前診断、デザイナー・ベビー、結合双生児、形態と価値、人間の尊厳、愛護動物、実験動物、飼育動物、種差別、共感の倫理学、動物実験、人工妊娠中絶、プロ・ライフ、プロ・チョイス、連続性と同一性、中絶生存胎児。
【この授業は全て対面で実施します】
本授業は、プロジェクターと授業支援システム(classroom)を使いながら講義形式で行います。クラスコードは e6qhl6f です。各授業の終了時に、classroomを通じて、その授業に関する課題を出します。受講生は、次回の授業までに課題を送信してください。課題は、classroomを通して、評価をつけて返却されます。課題のフィードバックについては、テーマごとに行われるディスカッションの際、模範解答(参考資料)の配布という仕方で行われます。さらに、各テーマの終了時にグループディスカッションと全体発表を行い、様々な観点から内容理解の深化を図ります。なお、授業の出席・感想・質問は、出席票を兼ねたリアクションペーパーに記載してください。質問に対する返答(フィードバック)は、次回授業時に行います。教員との面談については、授業開始前や終了後にオフィスアワーの時間を作りますので、その時に教壇に来てください。
【講義時間外に必要な学習の時間:60時間】
予習:受講生は授業前に教科書の該当箇所を読み、あらかじめ概要を把握しておいて下さい。また、参考書を使って、専門用語の意味等を調べたり、よく分からない表現や箇所を見つけたりしてください(約2時間)。
復習:授業時に配布された資料(講義原稿と参考資料)や返却された課題のコメントを読み直してください。また、グループディスカッションでの他の受講生の意見を参考にしながら、そのテーマに関する自分の考えをノートにまとめてください(約2時間)。
回 | 担当者 | 項目 | 内容 |
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1 | 鵜澤 和彦 | 授業ガイダンス | 教員の自己紹介、授業目標、到達目標、授業内容、授業の進め方、受講上の注意、成績評価の方法と基準、教科書と参考書、生命・医療倫理学の必要性(映画「ガタカ」の例)、classroomの使い方について説明します。 |
2 | 鵜澤 和彦 | 生殖医療(1):第4章 いのちの「質」は誰が決めるのか | 生殖(補助)医療の概念・種類・歴史、人工授精と体外受精、着床前診断、羊水検査、エコー検査、精子バンク、子供のいのちの質、子供に対する責任、デザイナー・ベビーについて説明します。 |
3 | 鵜澤 和彦 | 生殖医療(2):第4章 いのちの「質」は誰が決めるのか | 新型の着床前診断(アレイCGH法)、新型の出生前診断(NIPT)、遺伝カウンセリング、遺伝子ビジネス、子どもの出自及び出自を知る権利、ドナーの匿名性の原則、生殖医療の社会的認知の問題を解説します。 |
4 | 鵜澤 和彦 | 生殖医療(3):第4章 いのちの「質」は誰が決めるのか | これまでの授業のまとめに関する資料を読み、グループディスカッションと全体発表を行います。 |
5 | 鵜澤 和彦 | 結合双生児(1):第5章 双子の生死は誰が決めるのか | 結合双生児の概念、医学的な形態分類と統計、分離手術、事例分析1:ジョディとメアリ、出生時の状況、分離手術をめぐる立場の相違(SOL、最善利益)、裁判所の判決について考察します。 |
6 | 鵜澤 和彦 | 結合双生児(2):第5章 双子の生死は誰が決めるのか | 事例分析2:ラクシュミ、出生時の状況、村人の反応、両親の対応、形態と価値、認識の構造、人間の判別基準、人間の尊厳、二つの事例の比較、障害者差別、差別の構造について解説します。 |
7 | 鵜澤 和彦 | 結合双生児(3):第5章 双子の生死は誰が決めるのか | これまでの授業のまとめに関する資料を読み、グループディスカッションと全体発表を行います。 |
8 | 鵜澤 和彦 | 動物倫理(1):第6章 いのちの優先順位は誰が決めるのか | 区別と差別の概念、差別の起源、同情と共感の概念、救命ボートの思考実験、人間とチンパンジーの相違、集団を管理する知性、ピーター・シンガーの種差別の概念、功利主義を考察します。 |
9 | 鵜澤 和彦 | 動物倫理(2):第6章 いのちの優先順位は誰が決めるのか | 人間と動物の区別の徴表(精神的活動、社会的活動、生物学的特徴)、両者の共通点(動物行動学:デズモンド・モリス)、人間と動物の関わり(ペット、実験動物、畜産動物)を解説します。 |
10 | 鵜澤 和彦 | 動物倫理(3):第6章 いのちの優先順位は誰が決めるのか | 動物実験の現状(3Rの原則、動物に関連する法令および指針、動物実験の法規制の国際比較)、人間中心主義、功利主義的立場、共感の倫理学、生命中心主義について考察します。 |
11 | 鵜澤 和彦 | 動物倫理(4):第6章 いのちの優先順位は誰が決めるのか | これまでの授業のまとめに関する資料を読み、グループディスカッションと全体発表を行います。 |
12 | 鵜澤 和彦 | 妊娠中絶(1):第7章 いのちの始まりは誰が決めるのか | プロ・チョイス(中絶賛成派NARAL)とプロ・ライフ(中絶反対派NRLC)の対立、両立場の比較、胎児を人と認める時(①受精、②着床、③人の形、④出産、⑤配偶子)、胚の連続性と人格の自己同一性を解説します。 |
13 | 鵜澤 和彦 | 妊娠中絶(2):第7章 いのちの始まりは誰が決めるのか | プロ・ライフの二重結果原理、減胎(減数)中絶の概念、医師の発言、減数手術の論拠、生存中絶胎児の概念、英国ウェストミッドランド州の調査研究、中絶廃止運動家ジャンナ・ジェッセンのケースについて考察します。 |
14 | 鵜澤 和彦 | 妊娠中絶(3):第7章 いのちの始まりは誰が決めるのか | これまでの授業のまとめに関する資料を読み、グループディスカッションと全体発表を行います。 |
15 | 鵜澤 和彦 | まとめ | まとめ |
①人の誕生と死に関する倫理的問題を列挙し、それに関する自分の考えや立場を理由づけることができるようになる。②自分で問題を考え、それを文章にまとめることができるようになる。③生命・医療倫理の歴史や現状を踏まえ、国際的な視野から日本の医療制度の課題や問題点について自分の考えが持てるようになる。④医療の担い手が守るべき倫理規範とその思想的背景を説明できるようになる。
試験方法:筆記試験 実施時期:試験期間内
定期試験50%、課題50%の総合評価。課題は、授業内容を正しく理解しているかどうか、そして、自分の考えを筋道を立てて表現しているかどうか、という基準で評価されます。また、classroomのフォーラムや授業への積極的な参加は、その内容に応じて加点対象とします。
病気などやむを得ぬ理由で欠席した場合、classroomにアップロードしてある教材(講義原稿など)で欠席した授業の内容を把握しておいてください。また、欠席した授業の課題をclassroomを通じて提出すれば、その課題は加点対象とします。受講生の積極的な授業参加を望みます。
NPO法人、学会研修、文部省SSH事業などの経験を踏まえ、現代の医療・介護問題の本質を明らかにし、倫理学的な解決策を考える。とくに、医療現場におけるモラル・ジレンマの理解と解決の道筋を付ける際に、医療者がどのように考え、対応すべきかを説明する。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 | 定価(円) |
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教科書 | はじめて学ぶ生命倫理 | 小林亜津子 | ちくまプリマー新書 | 780円 |
参考書 | リベラル優生学のパラドックスーゲノム編集における遺伝的多様性をめぐってー | 鵜澤和彦 | 北里大学一般教育紀要第25号 | 0円 |
参考書 | 哲学の変換と知の越境 | 牧野、小野原、斎藤、山本編 | 法政大学出版局 | 3,000円 |
参考書 | 動物の解放 | ピーター・シンガー | 技術と人間 | 4,620円 |