英文名 | Ethics B | |
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科目概要 | 2025年度 後期/2単位 | |
授業対象 | P学部 水5/ A学部 水5/ 指定なし 木1or木2or金4 | |
科目責任者 | 小林 亜津子 | |
担当者 | 小林 亜津子 | |
備考 | 科目ナンバリング:L101-HC08/授業形態:講義 |
生命科学や医療技術の進展にともなって、私たちは人間の「生命」を、ある程度人為的に操作することができるようになってきました。人間の生と死が、自然の運命にまかされるのではなく、私たちの道徳的選択による問題となっています。安楽死や中絶、臓器移植など、生命倫理に託されたさまざまな課題を検討していくことによって、生と死という人間にかんする限りなく深い問題を、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。
生命倫理は、医療技術と人間性との新しい接点を探る倫理的な試みであると共に、インフォームド・コンセントや患者の自己決定権など、医学の倫理問題をも包括した学問領域です。授業では、生命倫理の代表的なトピックを毎回一つずつ取り上げ、具体的なケースを検討していきます。日本やアメリカで実際に起こった事件等を紹介しながら、議論を整理していきます。
授業はすべてオンラインで行います。教科書を2冊使用します。それぞれのテーマについて、講義動画等を用いながら、授業を展開していきます。講義後に、毎回、その時々のテーマについてのリアクションペーパーを書いて、Google Classroom上に提出してもらいます。【フィードバックの方法】印象的な意見などがあれば、適宜、紹介します。
【Google Classroomクラスコード】後期授業開始までにWebシラバス、一般教育部授業情報サイトに記載
【講義時間外に必要な学習の時間:60時間】
課題図書:教科書2冊を使用します。
予習:テーマに関連した記事をインターネットで検索したり、教科書内の該当するテーマの章に目を通しておく(120分程度)。
復習:授業ノートにもう一度目を通し、授業内で触れた事件等について自分で調べてみる(120分程度)。
回 | 担当者 | 項目 | 内容 |
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1 | 小林 亜津子 | 授業ガイダンス | 講義内容や授業の進め方、評価方法について説明する。 |
2 | 小林 亜津子 | 臓器売買は許されるか | 海外の臓器売買の現状とその倫理問題について考える。 |
3 | 小林 亜津子 | 患者の秘密を守るべきか | 守秘義務はなぜ必要なのか?守秘義務が解除される場合とは?医療者の守秘義務について考える。 |
4 | 小林 亜津子 | 新生児の治療停止 | 重度の障害をもって生まれてきた新生児の治療を停止してよいか。 |
5 | 小林 亜津子 | 遺伝子スクリーニングとプライバシー | ヒトゲノム・プロジェクトによる遺伝子診断技術のもたらしたELSIを考える。 |
6 | 小林 亜津子 | 宗教上の理由による輸血拒否 | 宗教上の理由から、生命をかけて輸血を拒否する患者に、どう対処したらよいかを考える。 |
7 | 小林 亜津子 | 動物を食べてもよいか | われわれは菜食主義者になるべきか?倫理的肉食主義者とは?普段の食生活を、アニマルライツの観点から見直していく。 |
8 | 小林 亜津子 | デザイナー・ベビーは許されるか | 男女生み分けや救世主きょうだい(ドナーとしての子ども)など、着床前診断による生命の選択は許されるのかを考える。 |
9 | 小林 亜津子 | 医師による自殺幇助 | アメリカの死神医師・ケボーキアンの裁判をめぐるドキュメントを紹介しながら、医療者による自殺幇助の是非を考える。 |
10 | 小林 亜津子 | 医療資源の配分 | 限られた医療資源を、どの患者に与えればよいのかという究極の選択について考える。 |
11 | 小林 亜津子 | 臨床試験の倫理問題 | ヒトを対象とした臨床試験の倫理問題を検討する。 |
12 | 小林 亜津子 | 動物実験は許されるか | 動物実験の是非を、人間と動物との違いは成り立つのか?という問題にさかのぼって考える。 |
13 | 小林 亜津子 | 認知症高齢者のコンピテンス | 認知症高齢者の判断能力の「判断」、医療に対する同意について考える。 |
14 | 小林 亜津子 | 結合双生児の分離手術 | シャム双生児の分離手術について検討する。 |
15 | 小林 亜津子 | 解説と確認 | 期末レポートについての確認および個別指導 |
生命倫理の諸課題をしっかり体で感じ取ることができる。例えば「インフォームド・コンセント」という言葉についても、単に「知識」として知るだけでなく、それがどのような具体的状況のなかで問題となり、実際の臨床の現場でいかなる事態において求められてくるのかを体感することができる。
試験方法:なし 実施時期:
毎回提出してもらうリアクションペーパー(70%)、および14回目の総合課題の内容(30%)で評価します。但し、総合課題の提出は、単位付与の条件とします。
※詳細については、初回のガイダンス時に周知する。
この授業では、何かを「知る」というよりは、みずから問題意識をもって「考える」ことが求められます。授業の目標は、必ずしも「正解」を見つけることではありません。安易に答えを出さず、ねばりづよく自分のスタンスの確立に努めてもらいたいと思います。文章を書いたり、考えることが好きな人、歓迎します。尚、本授業では、抽選を行ないます。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 | 定価(円) |
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教科書 | はじめて学ぶ生命倫理 | 小林亜津子 | ちくまプリマー新書 | 858円 |
教科書 | 看護のための生命倫理<改訂三版> | 小林亜津子 | ナカニシヤ出版 | 2,640円 |
参考書 | QOLって何だろう-医療とケアの生命倫理- | 小林亜津子 | ちくまプリマー新書 | 858円 |
参考書 | 生殖医療はヒトを幸せにするのかー生命倫理から考えるー | 小林亜津子 | 光文社新書 | 836円 |
参考書 | 生命倫理のレッスンー人体改造はどこまで許されるのか?ー | 小林亜津子 | 筑摩書房 | 1,210円 |