英文名 | Ethics A | |
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科目概要 | 2025年度 前期/2単位 | |
授業対象 | 指定なし 月1or水2 | |
科目責任者 | 鵜澤 和彦 | |
担当者 | 鵜澤 和彦※ | |
備考 | 科目ナンバリング:L101-HC07/授業形態:講義 |
よき医療とはどのようなことでしょうか。わたしたちは、肉親やペットの死を悼むことで「いのち」の尊厳や神聖さ(SOL)に気づきます。他方で、医療技術の進歩にともない、医療を自分で選択する機会も増えつつあります。たとえば、終末期患者が「生活の質」(QOL)を維持するために、延命治療の中止や安楽死を求めてくるケースもあります。この場合、医療従事者は、SOLとQOLとのモラル・ジレンマをどのように考えたらよいのでしょうか。本授業は、こうした問題を考えながら、生命・医療倫理に関する基礎的知識を習得し、医療従事者としての表現力、思考力、判断力を養うことを目的とします。
医療現場におけるモラル・ジレンマの分析を通じて、その背景にある価値観の対立を理解します。さらに、医療従事者として相応しい行動・態度がとれるよう医療・看護倫理の諸原則も学びます。なお、各回のテーマをより具体的に捉えるために、視聴覚教材(VTRや映画の一部)を活用します。【キーワード】インフォームド・コンセント、緩和治療、医療パターナリズム、セデーション(鎮静)、安楽死、ヒポクラテスの誓い、インフォームド・アセント、未成年後見人、代理同意、コンピテンスの臨床基準、生命倫理の原則(自律尊重、仁恵、無危害、正義)。
【この授業は全て対面で実施します】
本授業は、授業支援システム(classroom)を使いながら講義形式で行います。クラスコードは mn2uvni です。各授業の終了時に、classroomを通じて、その授業に関する課題を出します。受講生は、次回の授業までに課題を送信してください。課題はclassroomを通して、評価をつけて返却されます。課題のフィードバックについては、テーマごとに行われるディスカッションの際、模範解答(参考資料)の配布という仕方で行われます。さらに、各テーマの終了時にグループディスカッション(任意参加)と全体発表を行い、様々な観点から内容理解の深化を図ります。なお、授業の出席・感想・質問は、出席票を兼ねたリアクションペーパーに記載してください。質問に対する返答(フィードバック)は、次回授業時に行います。教員との面談については、授業開始前や終了後にオフィスアワーの時間を作りますので、その時に教壇に来てください。
【講義時間外に必要な学習の時間:60時間】
予習:受講生は授業前に教科書の該当箇所を読み、あらかじめ概要を把握しておいて下さい。また、参考書を使って、専門用語の意味等を調べたり、よく分からない表現や箇所を見つけたりしてください(約2時間)。
復習:授業時に配布された資料(講義原稿と参考資料)を読み直してください。また、全体ディスカッションでの他の受講生の意見を参考にしながら、そのテーマに関する自分の考えをノートにまとめてください(約2時間)。
回 | 担当者 | 項目 | 内容 |
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1 | 鵜澤 和彦 | 授業ガイダンス | 教員の自己紹介、授業目標、到達目標、授業内容、授業の進め方、受講上の注意、成績評価の方法と基準、教科書と参考書、生命・医療倫理学の必要性、classroomの使い方について説明します。 |
2 | 鵜澤 和彦 | 倫理学とは何か | 倫理学の基本概念、具体的には、道徳と倫理学の相違、倫理学の問題領域と方法論、事実命題と規範命題、記述倫理と規範倫理、生命・医療倫理学の成立史(ニュルンベルク綱領、ヘルシンキ宣言など)について解説します。 |
3 | 鵜澤 和彦 | 終末期医療(1):第1章 いのちの終わりは誰が決めるのか | 死の概念、患者の自己決定権、インフォームド・コンセント(IC)、パターナリズム、いのちの「終わり」の選択(①セデーション、②自然死、③安楽死、④延命治療)を解説し、それぞれの問題点とそれに関するモラル・ジレンマを明らかにします。 |
4 | 鵜澤 和彦 | 終末期医療(2):第1章 いのちの終わりは誰が決めるのか | がん告知に関する法整備、がん告知についての統計、がん告知の問題、終末期患者への対応、死の受容に関する五段階説(エリザベス・キューブラーロス)、医療資源の配分などの問題を考えていきます。 |
5 | 鵜澤 和彦 | 終末期医療(3):第1章 いのちの終わりは誰が決めるのか | 医療資源の配分における正義の原則、医学思想史及び医師の職業倫理の観点から「ヒポクラテスの誓い」を説明し、さらに「生命の神聖さ」(SOL)と「生活の質」(QOL)の概念について解説します。 |
6 | 鵜澤 和彦 | 終末期医療(4):第1章 いのちの終わりは誰が決めるのか | 第1回から第4回の課題の内容をふまえ、そのテーマに関してグループディスカッションと全体発表を行います。 |
7 | 鵜澤 和彦 | 小児医療(1):第2章 子供の医療は誰が決めるのか | ホスピタリズムと幼児の能力(ヤヌシュ・コルチャック、内藤寿七郎)、幼児の精神的な病気(スピッツ)、インフォームド・アセント(IA)の概念、親の許諾、患児の賛同、IAの適用例、日本におけるIAの実施率について考察します。 |
8 | 鵜澤 和彦 | 小児医療(2):第2章 子供の医療は誰が決めるのか | 拒食症の概念ならびに事例分析1:拒食症の少女の事例を取り上げ、子供・医師、両親・裁判官の間でどのように価値観が対立するかを明らかにします。また、パターナリズムと治療の拒否権に関する問題を考察します。 |
9 | 鵜澤 和彦 | 小児医療(3):第2章 子供の医療は誰が決めるのか | 事例分析2:宗教的理由から輸血を拒否した少年の事例を取り上げ、子供・医師、両親・裁判官の間でどのように価値観が対立するかを明らかにします。さらに、仁恵原理とパターナリズムの概念、医療パターナリズムの正当化基準について考察します。 |
10 | 鵜澤 和彦 | 小児医療(4):第2章 子供の医療は誰が決めるのか | 第5回から第8回の課題の内容をふまえ、そのテーマに関してグループディスカッションと全体発表を行います。 |
11 | 鵜澤 和彦 | コンピテンス(1):第3章 判断能力は誰が決めるのか | 判断能力のない患者(生まれながらに判断能力を持ちえない患者と事故や病気で判断能力を失った患者)、リビング・ウィル、成年後見、代理同意(PC)、PCの基準(最高利益と代理判断)及び問題点、臓器移植法改正、家族の範囲について考察します。 |
12 | 鵜澤 和彦 | コンピテンス(2):第3章 判断能力は誰が決めるのか | 自律原理とコンピテンス(自律概念、判断能力の概念、コンピテンスの概念)、生命倫理の基本原則(自立尊重原則、仁恵原則、無危害原則、正義原則)とその衝突、コンピテンス判定の問題について説明します。 |
13 | 鵜澤 和彦 | コンピテンス(3):第3章 判断能力は誰が決めるのか | 精神機能検査、コンピテンスの臨床基準(①選択及びコミュニケーション能力、②理解力、③本人の意思決定と価値観の整合性、④妄想や幻影の排除、⑤選択の合理性)、スライディング・スケールを説明します。 |
14 | 鵜澤 和彦 | コンピテンス(4):第3章 判断能力は誰が決めるのか | 第9回から第12回の課題の内容をふまえ、そのテーマに関してグループディスカッションと全体発表を行います。 |
15 | 鵜澤 和彦 | まとめ | まとめ |
①人の誕生と死に関する倫理的問題を列挙し、それに関する自分の考えや立場を理由づけることができるようになる。②自分で問題を考え、それを文章にまとめることができるようになる。③生命・医療倫理の歴史や現状を踏まえ、国際的な視野から日本の医療制度の課題や問題点について自分の考えが持てるようになる。④医療の担い手が守るべき倫理規範とその思想的背景を説明できるようになる。
試験方法:筆記試験 実施時期:試験期間内
定期試験50%、課題50%の総合評価。課題は、授業内容を正しく理解しているかどうか、そして、自分の考えを筋道を立てて表現しているかどうか、という基準で評価されます。また、classroomのフォーラムや全体ディスカッションへの積極的な参加は、その内容に応じて加点対象とします。
病気などやむを得ぬ理由で欠席した場合、classroomにアップロードしてある教材(講義原稿など)で欠席した授業の内容を学習しておいてください。また、欠席した授業の課題をclassroomを通じて提出すれば、その課題は加点対象とします。受講生の積極的な授業参加を望みます。
NPO法人、学会研修、文部省SSH事業などの経験を踏まえ、現代の医療・介護問題の本質を明らかにし、倫理学的な解決策を考える。とくに、医療現場におけるモラル・ジレンマの理解と解決の道筋を付ける際に、医療者がどのように考え、対応すべきかを説明する。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 | 定価(円) |
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教科書 | はじめて学ぶ生命倫理 | 小林亜津子 | ちくまプリマー新書 | 780円 |
参考書 | 生命医学倫理 | トム・L・ビーチャム他 | 成文堂 | 7,350円 |
参考書 | ケアの向こう側 看護職が直面する道徳的・倫理的矛盾 | ダニエル F. チャンブリス 著、浅野 祐子 訳 | 日本看護協会出版会 | 3,000円 |
参考書 | 哲学の変換と知の越境 | 牧野、小野原、斎藤、山本編 | 法政大学出版局 | 3,000円 |