英文名 | Philosophy B | |
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科目概要 | 2025年度 後期/2単位 | |
授業対象 | 指定なし 月2or水1 | |
科目責任者 | 鵜澤 和彦 | |
担当者 | 鵜澤 和彦※ | |
備考 | 科目ナンバリング:L101-HC02/授業形態:講義 |
わたしたちは、どのようにして他者のこころを理解できるのでしょうか。たとえば、患者による病の受け止め方やQOL(生活の質)は、たとえ同じ症状であったとしても、人によって相違があります。このような差異が生じる理由は、生の意義、価値、目的が、人に応じて異なるからです。感情や情動は、いわば理性的思考の前景として、その思考や決断に影響を与えています。この点を理解し、患者に適切な医療を提供するためには、その患者の「生を生それ自身から」理解する必要があります。本授業は、ディルタイの「生の解釈学」を通して、人間の社会的・歴史的生や他者理解の構造(体験-表現-理解)を明らかにし、医療における人間関係論の哲学的基礎を学ぶことを目的とします。
「生の哲学」の起点となったディルタイ解釈学のテキストを講読し、具体例を挙げて、その内容を分かりやすく解説していきます。そして、生の解釈学が、人文社会科学(ドイツ語では「精神科学」)、ならびに、医療における人間関係論の哲学的基礎をなすことを明らかにしていきます。また、テーマごとに行われるグループディスカッションを通して、内容理解の深化を図ります。その際、著者の主張の例証や反証を考えることで、互いに問題をよりよく理解し、それを言葉で表現できるように配慮します。【キーワード】精神科学、体験・表現・理解(追体験)、歴史的世界の構成、自己と環境世界(他者も含む)との作用連関、心的生の獲得連関、個人並びに共同体の創造物としての生の表現、生の客観化あるいは客観態、解釈学的循環
【この授業は全て対面で実施します】
本授業は、授業支援システム(classroom)を使いながら講義形式で行います。クラスコードは qtgzzek です。各授業の終了時に、classroomを通じて、その授業に関する課題を出します。受講生は、次回の授業までに課題を送信してください。課題はclassroomを通して、評価をつけて返却されます。課題のフィードバックについては、テーマごとに行われるディスカッションの際、模範解答(参考資料)の配布という仕方で行われます。さらに、各テーマの終了時にグループディスカッションと全体発表を行い、様々な観点から内容理解の深化を図ります。なお、授業の出席・質問・感想は、出席票を兼ねたリアクションペーパーに記載してください。質問に対する返答(フィードバック)は、次回授業時に行います。教員との面談については、授業開始前や終了後にオフィスアワーの時間を作りますので、その時に教壇に来てください。教科書は、ディルタイ全集第4巻の該当箇所「歴史的世界の構成」をPDFにして、受講生に提供します。受講生はclasroomから教科書をダウンロードしてください。
【講義時間外に必要な学習の時間:60時間】
予習:受講生は授業前に教科書の該当箇所を読み、あらかじめ概要を把握しておいて下さい。また、参考書を使って、専門用語の意味等を調べたり、よく分からない表現や箇所を見つけたりしてください。(約2時間)。
復習:授業時に配布された資料(講義原稿と参考資料)を読み直してください。また、ディスカッションでの他の受講生の意見を参考にしながら、そのテーマに関する自分の理解や考えをノートにまとめてください(約2時間)。
回 | 担当者 | 項目 | 内容 |
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1 | 鵜澤 和彦 | 授業ガイダンス | 教員の自己紹介、授業目標、到達目標、授業内容、授業の進め方、受講上の注意、成績評価の方法と基準、教科書と参考書、classroomの使い方のほか、導入として、ディルタイの生涯と学説について説明します。 |
2 | 鵜澤 和彦 | 第1部 精神科学論(1) | 精神科学とは何か、精神科学の対象としての人間、心身の統一体としての人間について学びます。 |
3 | 鵜澤 和彦 | 第1部 精神科学論(2) | 自然科学と精神科学、生の表出と理解、認識と理解、体験・表現・理解の連関について学習します。 |
4 | 鵜澤 和彦 | A. 精神科学論のまとめ | 第2回と第3回までの授業の振り返りと課題の内容をふまえ、グループディスカッションと全体発表を行います。 |
5 | 鵜澤 和彦 | B. 精神科学と歴史理論の発達(1) | 自然科学と精神科学の構成(成り立ち)、および、それらの科学と論理学と認識論の関係、精神科学の構成(成り立ち)と歴史的意識について学びます。 |
6 | 鵜澤 和彦 | B. 精神科学と歴史理論の発達(2) | 歴史的世界の構成(成り立ち)の二つの方向、自然科学と精神科学の構成の相違を学習します。 |
7 | 鵜澤 和彦 | C. 第1章 対象的把握の構造 | 対象的把握とそれによって成立する心的連関、その心的連関全体の一部としての体験、感覚の比較、同等性と差異性、論理的思考、判断と代表、推論の構造、体験の二方向について学びます。 |
8 | 鵜澤 和彦 | 精神科学と歴史理論のまとめ | 第5回から第7回までの授業の振り返りと課題の内容をふまえ、グループディスカッションと全体発表を行います。 |
9 | 鵜澤 和彦 | 対象的把握における連関 | 第3部「精神科学の連関に関する一般的命題」第1章「対象的把握」第2節「対象的把握における連関」について学びます。 |
10 | 鵜澤 和彦 | 心理学と解釈学 | 第3部「精神科学の連関に関する一般的命題」第2章「精神科学の構造」第1節「生と精神科学」の個所を学習します。 |
11 | 鵜澤 和彦 | 生と精神科学 | 第3部「精神科学の連関に関する一般的命題」第2章「精神科学の構造」第1節「生と精神科学」の個所を学習します。 |
12 | 鵜澤 和彦 | 対象的把握のまとめ | 第9回から第11回までの授業の振り返りと課題の内容をふまえ、グループディスカッションと全体発表を行います。 |
13 | 鵜澤 和彦 | 精神的世界が与えられる諸方式 | 第2節「精神的世界が与えられる諸方式」1.体験から生じてくる代現の系列、2.理解における相互依存の関係、3.二つの科学の絶えざる相互作用による生の表出の漸次的な解明を学びます。 |
14 | 鵜澤 和彦 | 生の解釈学全体の振り返り | ディルタイ哲学に関する授業全体を振り返り、彼の思想が自己や他者の理解にどのように貢献するかを総括します。また、その現代的意義を要約します。 |
15 | 鵜澤 和彦 | まとめ | まとめ |
①他者の心的生を理解する解釈学を通して、他者理解の構造と方法、並びに、精神科学の基礎を理解することができる。②自己と他者ないしは環境的世界との作用連関、そして、自己の心的生の獲得連関(表象、概念、判断、推論など)によって、各個人の意味・価値・目的の形成とそれらの相違を把握することができる。③生の解釈学が、心理療法の分野での臨床的応用に優れていることを知ることができる。
試験方法:筆記試験 実施時期:試験期間内
定期試験50%、課題50%の総合評価。課題は、授業内容を正しく理解しているかどうか、そして、筋道を立てて自分の考えを表現しているかどうか、という基準で評価されます。また、ディスカッションへの積極的な参加は、その内容に応じて加点対象とします。
病気などやむを得ぬ理由で欠席した場合、classroomにアップロードしてある教材(講義原稿や授業資料など)で欠席した授業の内容を自習しておいてください。また、classroomを通じて、欠席した授業の課題を提出すれば、その課題は加点対象とします。受講生の積極的な授業参加を望みます。
NPO法人、学会研修、文部省SSH事業などの経験を踏まえ、現代の医療・介護問題の本質を明らかにし、哲学的・倫理学的な解決策を考える。とくに、生と死に関する哲学的考察が、医療現場にどのように応用できるかを説明する。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 | 定価(円) |
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教科書 | (なし) | |||
参考書 | 精神科学における歴史的世界の構成・ディルタイ全集第4巻 | ディルタイ著、西谷敬訳 | 法政大学出版局 | 25,000円 |
参考書 | ディルタイ その哲学への案内 | ボルノー著、麻生建訳 | 未来社 | 2,500円 |
参考書 | ディルタイと現代 | 西村・牧野・舟山編 | 法政大学出版局 | 4,400円 |