英文名 | Philosophy A | |
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科目概要 | 2025年度 前期/2単位 | |
授業対象 | 指定なし 月2or水1 | |
科目責任者 | 鵜澤 和彦 | |
担当者 | 鵜澤 和彦※ | |
備考 | 科目ナンバリング:L101-HC01/授業形態:講義 |
わたしたちは、世界や他者と関わりながら生きていますが、ふだんはその根拠について考えたりはしません。しかし、ひとたび生の転機や危機が訪れると、自分の生を振り返り、その根拠を尋ねるようになります。その場合「生きる」とは、そもそもどのようなことなのでしょうか。また、生きる主体である個人の「こころ」と「からだ」は、どのように関わるのでしょうか。そして「生」と「死」は、本来どのような関係にあるのでしょうか。哲学には、生をめぐる議論の知的遺産があります。今日の医学・医療・看護に関する思想も、哲学の遺産を活用しながら、新しい成果を生み出しています。本授業は、現代の医学哲学を手引きとし、人間の生と死について考えることを目的とします。
医学哲学者の木村敏とヴィクトル・フォン・ヴァイツゼガーのテキストを講読し、その心身問題と死生観について学びます。哲学の諸概念については、日常の様々な事例や医療の症例分析などを挙げることで、その内容を具体的に把握できるようにします。さらに、テーマごとに行われるグループディスカッションを通して、内容理解の深化を図ります。その際、著者の主張の例証や反証を考えることで、互いに問題をよりよく理解し、それを言葉で表現できるように配慮します。【キーワード】ゲシュタルトクライス、生きているもの(生物)と生命そのものの差異、心身相関、間主観性、主観と主体、公共的と私的、境界、個体と集団、主体的身体、人間学的医学、環境との相即、二重の境界、死の人称的差異、医学への主体の導入、二人称の関係の共有
【この授業は全て対面で実施します】
本授業は、授業支援システム(classroom)を使いながら講義形式で行います。クラスコードは 3fklogv です。各授業の終了時に、classroomを通じて、その授業に関する課題を出します。受講生は、次回の授業までに課題を送信してください。課題はclassroomを通して、評価をつけて返却されます。課題のフィードバックについては、テーマごとに行われるディスカッションの際、模範解答(参考資料)の配布という仕方で行われます。さらに、各テーマの終了時にグループディスカッションと全体発表を行い、様々な観点から内容理解の深化を図ります。なお、授業の出席・質問・感想は、出席票を兼ねたリアクションペーパーに記載してください。質問に対する返答(フィードバック)は、次回授業時に行います。教員との面談については、授業開始前や終了後にオフィスアワーの時間を作りますので、その時に教壇に来てください。
【講義時間外に必要な学習の時間:60時間】
予習:受講生は授業前に教科書の該当箇所を読み、あらかじめ概要を把握しておいて下さい。また、参考書を使って、専門用語の意味等を調べたり、よく分からない表現や箇所を見つけたりしてください。(約2時間)。
復習:授業時に配布された資料(講義原稿と参考資料)を読み直してください。また、ディスカッションでの他の受講生の意見を参考にしながら、そのテーマに関する自分の理解や考えをノートにまとめてください(約2時間)。
回 | 担当者 | 項目 | 内容 |
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1 | 鵜澤 和彦 | 授業ガイダンス | 教員の自己紹介、授業目標、到達目標、授業内容、授業の進め方、受講上の注意、成績評価の方法と基準、教科書と参考書、classroomの使い方、そして、導入として「哲学とは何か」について説明します。 |
2 | 鵜澤 和彦 | 第1章 心身相関と間主体性 第1節 心身二元論を超えて | 「からだ」と「こころ」、わたしの身体の個別性とわたしの経験の個別性の相違、自然科学的な心身論と西洋哲学の心身論、意識体験の本質、自己及び他者の主観の理解としての「間主観性」について学びます。 |
3 | 鵜澤 和彦 | 第1章 心身相関と間主体性 第2節 主観と主体 | 主観という哲学用語の歴史的考察(Subjektという用語の歴史的変遷)、日本語における主観と主体のニュアンスの相違、自我及び自己の同義語としての主観、主観と客観に関して学習します。 |
4 | 鵜澤 和彦 | 第1章 心身相関と間主体性 3.公共的主観性と私的主観性 | 公共的と私的の区別、共生関係における間主観性(私的間主観性、主観的体験の共有ならびに一体感、身体的な生の共有)、第三者的な客観的関係における間主観性(公共的間主観性、純粋な意識の志向性)を学びます。 |
5 | 鵜澤 和彦 | 第1章 心身相関と間主体性 | 第1回から第3回までの課題の内容をふまえ、そのテーマに関してグループディスカッションと全体発表を行います。 |
6 | 鵜澤 和彦 | 第1章 心身相関と間主体性 4.ヴァイツゼガーの「主観・主体」 | ヴァイツゼガーの主観・主体の概念、環境世界との相即、相即の中断としての転機・危機、生物間の根拠(依存)関係、生物と生命そのものとの根拠(依存)関係、従来の主観及び主体概念との相違について学びます。 |
7 | 鵜澤 和彦 | 第1章 心身相関と間主体性 5.境界はどこか ― 個体と集団 | 個体としての生と社会集団としての生、社会集団と環境的世界との相即、生活史としての個人や共同体の歴史全体としての環境、境界としての主体の存在、個別的主体性と集団的個別性という二重の主体性について学習します。 |
8 | 鵜澤 和彦 | 第1章 心身相関と間主体性 6.主体的身体 | 人間の歴史的自己意識、人間存在の一回性・唯一性・交換不可能性、歴史としての自己意識の本質、人間と他の生物種との共通点としての身体(からだ)、環境への適応的行動との境界としてのからだ、こころとしてのからだに関して学習します。 |
9 | 鵜澤 和彦 | 第1章 心身相関と間主体性 | 第6回から第8回までの課題の内容をふまえ、そのテーマ、並びに、第1章全体に関してグループディスカッションと全体発表を行います。 |
10 | 鵜澤 和彦 | 第2章 人間学的医学における生と死 1.〈生きている〉というアクチュアリティ | 生の価値と目的をめぐる思索、「生きている」という生命の基本的な現実(アクチュアリティ―)と有限な限りを持つ実在(リアリティー)の区別、「生きていること」(生命そのもの)と「生きているもの」(生物)の区別について学びます。 |
11 | 鵜澤 和彦 | 第2章 人間学的医学における生と死 2.環境との「相即」-生きることの本質 | 生きている有機体と環境世界との不即不離の相互関係(相即)、音楽の比喩による相即の説明、生物と環境世界との境界としての生、存在と存在者との存在論的差異(ハイデガー)、ライプニッツのモナド論を学習します。 |
12 | 鵜澤 和彦 | 第2章 人間学的医学における生と死 3.「二重の境界を生きる」 | 個体の活動と集団行動、生物の行動の「利己性」と集団全体の利益を考慮した「利他性」、自己の生命と集団の生命、各自の個別的な志向性と集団全体の志向性との二重性、生き物と生命そのものとの二重性について学びます。 |
13 | 鵜澤 和彦 | 第2章 人間学的医学における生と死 4.「〈死〉の人称的差異」 | 生の越境としての死、一人称・二人称・三人称の立場からの考察、一人称的立場からの死の経験の不可能性、三人称的立場からの客観的な死の理解 |
14 | 鵜澤 和彦 | 第2章 人間学的医学における生と死5.「医学への主体の導入」- 二人称の関係の共有 | 二人称的立場からの死のアクチュアリティの理解を学習します。 |
15 | 鵜澤 和彦 | まとめ | まとめ |
①こころとからだを一体とみなす「心身医学」の哲学的基礎を学ぶことができる。②有機体の生命活動を説明するゲシュタルトクライスを通して、医療の対人関係のあり方を学ぶことができる。③人間の生と死についての哲学的洞察(生の相互性と死の連帯性)を学ぶことができる。
試験方法:筆記試験 実施時期:試験期間内
定期試験50%、課題50%の総合評価。課題は、授業内容を正しく理解しているかどうか、そして、筋道を立てて自分の考えを表現しているかどうか、という基準で評価されます。また、ディスカッションへの積極的な参加は、その内容に応じて加点対象とします。
病気などやむを得ぬ理由で欠席した場合、classroomにアップロードしてある教材(講義原稿や授業資料など)で欠席した授業の内容を自習しておいてください。また、classroomを通じて、欠席した授業の課題を提出すれば、その課題は加点対象とします。受講生の積極的な授業参加を望みます。
NPO法人、学会研修、文部省SSH事業などの経験を踏まえ、現代の医療・介護問題の本質を明らかにし、哲学的・倫理学的な解決策を考える。とくに、生と死に関する哲学的考察が、医療現場にどのように応用できるかを説明する。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 | 定価(円) |
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教科書 | からだ・こころ・生命 | 木村敏 | 講談社学術文庫 | 600円 |
参考書 | あいだ | 木村敏 | ちくま学芸文庫 | 950円 |
参考書 | ゲシュタルトクライス 知覚と運動の人間学 | ヴァイツゼッガー(著)、木村敏・浜中淑彦(訳) | みすず書房 | 7,150円 |
参考書 | 哲学の変換と知の越境 | 牧野、小野原、斎藤、山本編 | 法政大学出版局 | 3,000円 |